
××年×月×日
それは、デリットがまだ人間だった頃の話。
ずっと幸せでいるのはつまらない。
正しいことだけをするのもつまらない。
物凄くつまらない人生になりそうだ。
食べるべきでない物などもある。
私は自分の好きなように自由に生きたいのに、
あの家族のせいで退屈な人生を送ることになろうとしている。
その人たちを見るだけで気分が悪くなる。
××年××月××日
私は天使を信じる家族の中で唯一の異端者だった。
一緒に過ごすことが苦痛で、そのまま大人になって家を出た。
そこからしばらく連絡など来ても無視し続け、縁を切った。
私だけの自由が欲しいから。
そして——
私が嫌う、恨みのある家族たちを殺すために。
いなくなった方が、みんなの幸せであるから。
××年××月××日
昔と今の私は大きく変わった。 デリットであることがバレないように。
その家族を殺すために建てられた大きな家に住む、殺人鬼。
もちろん関係ない人間も例外ではない。
私は〝計画〟のために店長にはならなかった。
突然いなくなれば怪しまれる。
大きな家も、私の名ではない。
逃げ道は常に用意してある。
××年×月×日
大きな家の中にある酒居屋を開店した。
私はスタッフとして、そして管理人として人々を迎え入れた。
会議室、宿泊施設、酒場。
夜な夜な——
相手の飲み物に睡眠薬を入れ、眠らせる。
そして屋根裏へ運ぶ。 命は静かに消えていく。
肉倉庫には“証拠”も残らない。
みんな同じ人間なのに。 人間を食べても美味しいと感じるでしょう。
残酷なやり方は初めてだったが、 個人的にはとても楽しいと感じた。
私にはこういうことが向いているのかもしれない。
……でも。
この〝痛み〟とは、どんな感じなのだろう。
そんな疑問もあった。
××年×月×日
その日も心地よく働いていた。
「デリットさん、右端のお客さんからお呼びですよ。」
「…?わかりました。」
移動し、丁寧に頭を下げる。
「お待たせしました、デリットと申します。」
「いきなりの指名で申し訳ありません、私の名前はミアです」
——ミア。
今まで見たことがないほど美しい女性だった。
彼女は言った。
「実は私は植物なので水と蜜しか飲めないのです…」
「植物ですか……何か作ってきますので少しお待ちください」
思い付きで作ったハニードリンク。
彼女は嬉しそうに飲んだ。
「……デリットさん、明日も来ても良いですか?そのまま帰るの何だか寂しいんです…」
「全然構いませんよ、ハニードリンクを気に入っていただたようで嬉しいです。
いつでも作って差し上げますよ」
「(きゅん……なんて優しいの…天使かな…)ありがとうございます…!デリットさんって……」
「…?どうしたんですか?」
「いいえ、何でもないです!」
——私は気付かなかった。
彼女が恋をしていたことも。
私が殺人鬼であることも、 途中で消えることも、言わずに。
××年×月×日
予約欄を確認したとき、 そこに家族の名前があった。
「……計画通り、実行しないと…ね。」
口元がわずかに歪む。
××年×月×日
彼らは泊まりに来た。 懐かしい顔。
そして、嫌悪の対象。
部屋のワインには睡眠薬。
夜。
静かに運ぶ。
全員。
成功した。
「……私の任務は終わった。あとは私が消えるだけ。」
私もその家族の一人。
自分が消えれば、すべて終わる。
それでいいでしょう。
××年×月×日
次の日。
ミアは何も知らずに店を訪れた。
「…どうして、教えてもらわなかったの…
デリット…どこ行ったの……恋していたのに…。」
涙が落ちる。
その頃。
私は海の崖の上に立っていた。
死体も、骨も、何も残したくない。
海の中で消えたい。
「私のやりたいことはもうやり切ったんだ。家族たちは私が殺したんだ。
神様は何も見ていない。笑えるなぁ……
さぁ、お疲れさまでした」
崖から飛び降りる。
海に沈む。
光が遠ざかる。
それが——
人間時代のデリットの最期だった。
